遺言とは、故人の意思として尊重され、その意思を実現させる為に制度化されたものです。
遺言による相続は、法定相続に優先するものですから、法定相続人以外で生前にお世話になった方に財産を遺したい場合や自分が生活を支えていた方に法定相続以外の割合で遺産を分配させたい場合などは遺言が最良の策と言えます。
日常用語としての「遺言」は、形式や内容にかかわらず広く故人が死後のために遺した言葉や文章を指しますが、民法上の法制度における「遺言」は、故人の死後に自己の財産の帰属を決定するために行う最終の意思表示とされています。
遺言には自分の死後に実現を願うどんなことでも書くことができます。しかし、遺言に書いたことがすべて実現されるわけではなく、効力をもつ主な事柄は以下の通りです。
現在の制度は、遺言でできることに厳格な要件を定めた上で、遺族の地位や生活の保護も考慮したものと言えるでしょう。
遺言書を残しておくほうがよいケースを具体的に記します。
夫が先に亡くなった場合、夫は残された妻の生活のために自分の財産を全て妻に残したくても、夫に親や兄弟姉妹がいて、遺言がない場合には、その財産は妻一人のものにはなりません。家が唯一の財産であった場合、遺産分割のために妻は家を手放さなければならないことにもなりかねません。
また、入籍していない妻の場合は、戸籍上は他人であり相続権はありません。事実上夫婦として長い年月を共に暮らしてきても、遺言がない場合には、夫の肉親で全ての財産は分配されてしまいます。
同居している息子のお嫁さんが献身的に尽くしてくれるので財産を遺したい場合など、遺言がない場合には、息子のお嫁さんには財産を遺すことができません。
工場や農地など基盤となる財産が複数の相続人に分割されてしまうと事業そのものの成立が難しくなる場合があります。
事業を継承してゆく場合には、後継者の選定及び事業に必要な資産を遺せる様な遺言書の作成、また相続税対策も予め考慮するとよいでしょう。
配偶者、子、親が亡くなっている場合の法定相続人は兄弟姉妹(甥姪)となります。
遺言がない場合、亡くなった人を誰が世話してきたかなどにより相続が円満に進まない場合があります。
前妻・後妻とその子供たちがいる場合など、子供が連れ子なのかどうか、養子なのかどうかで相続権が異なってきます。
遺言は定められている方式に従っていなければ法的な効果はありません。民法が定めている遺言には、大別して普通方式と特別方式の2種類があります。
一定の書式にのっとり誰の補佐も受けずに遺言者が自分で全て記入する、遺言の中では最も簡単に作成することができる形式です。
簡単にできる一方で、紛失や法的に無効になる恐れなどもあります。
※封筒の封はしなくてもよいが、相続人又はその代理人が立ち会って家庭裁判所で開封する必要がある
(民法1004条3項)検認について
※加除・変更は、遺言者がその場所を指示し、変更した旨を付記してその変更場所に押印すること。
(○行目削除#字 加入#字 氏名)
線(1-2本:下の文字が見えるように)を引き押印
変更の場合:「○○」を「△△」に変更。
できるだけ訂正はしないで書き直したほうが無難です。
遺言の内容を誰にも知られたくない場合には、秘密証書遺言にします。自書を原則とし、内容を秘密にできますが、その存在を公証人に明らかにしてもらうための手続きが必要となります。
公証役場で公証人が作るため、遺言の中でもっとも確実な効力をもちます。公正証書なので無効になる可能性は低く、原本が公証役場に保管されるため、改変や破棄、隠匿などの危険性もありません。公証役場での手続きや費用の面での負担を伴います。
封印のある遺言書を預かっている方、発見した方は、すぐにその遺言内容を見ることはできません。封印のある遺言書は家庭裁判所において相続人またはその代理人の立会いがなければ開封することができません。
遺言者の死亡を知った後、ただちに遺言書を家庭裁判所に「検認」の手続きを申し立てる必要があります。
検認とは、相続人に対し遺言の存在及びその内容を知らせるとともに、遺言書の形状、加除訂正の状態、日付、署名など検認の日現在における遺言書の内容を 明確にして遺言書の偽造・変造を防止するための手続です。
遺言の有効・無効を判断する手続ではありません。
ご自身を取り巻く環境や資産状況など、お一人お一人に異なる事情をお持ちのことと存じます。
遺言書作成、ご質問・心配事などありましたらお気軽にご相談下さい。