想続だより

嫡出子と非嫡出子の相続

平成25年9月4日に最高裁判所から民法の規定にある非嫡出子(結婚していない男女から生まれた子供)の相続分が嫡出子(結婚している夫婦から生まれた子供)の相続分の半分であることについての違憲判決が出されました。

テレビや新聞報道で争いについての簡単な家族関係や原告・被告の主張が出ていました。原告は「自分に選択の余地のないことで相続分が半分であるということは法の下の平等に反する。」「自分の価値が半分といわれているようで心情的に納得できない。」というものでした。

被告の主張は「家族として支えてきたのは自分たちである。」「法律婚を尊重するという基本理念に基づき、嫡出子と非嫡出子で異なる取扱いをすることは、不合理とは言えない。」という主張でした。どちらの言い分にも一理あると思います。
その当事者の今までの経緯や背景など分かりませんし、テレビや新聞というメディアを通しての断片的な情報だけで、この家族の言い分について他者が安易に白黒つけられるものでもありません。

ただ最高裁はこの案件についてどうこうではなく、民法の900条の規定については憲法に照らしておかしいと判断したのでしょう。それ自体も理解できます。しかし、私はこのメディアの議論を聞いていて違和感を感じました。

メディアでは法定相続分という財産のことについてだけクローズアップしていて、遺産争いをする相続人の主張だけが紹介されています。肝心な財産を遺された方の面影や生き様が全く感じられないからです。

相続は亡くなった方の人生の総決算です。そして『相続』の『相』という字は『姿』と言う意味です。相続で争うということは、親の人生の総決算でその最期を汚すということと言えます。

まずは財産の多い少ないではなく、お亡くなりになった親に「生んでくれてありがとう」「育ててくれてありがとう」「人生お疲れ様でした。」という思いが先です。感謝と労いという重しをつけて引継いだ財産は生きたお金として大切に使われるでしょう。感謝や労いの気持ちがなく、うらみ・つらみ・ねたみ・そねみ・やっかみで手に入れたお金はあぶく銭で散財してしまうでしょう。そして残るのは負の感情とお金に対する悪習慣です。メディアには法律の改正議論よりもそういった教育論や社説を掲載してもらいたいものです。

相続手続きの疑問を解決!Q&A

Q 婚外子の相続分の違憲判決が出ましたが、今までは救済する事が出来なかったのですか?

遺言を残す事と婚外子である実子と養子縁組をする方法がありました。ただどちらも親の意思が必要です。子供の意思ではどうする事も出来ないという事が違憲判決の一因です。法定相続分に優先するのは遺言です。遺言を活用しましょう。

Q 今どれだけの人が遺言を書いているのですか?

平成22年の統計で公正証書遺言は81,984件、遺言書の検認手続きが14,996件でした。平成22年にお亡くなりになった方は約120万人です。公正証書遺言は書いた件数なので未だお亡くなりになっていませんが、それをあわせても8%程度です。
※アメリカでは70%近くの方が遺言書を書いているそうです。

Q 自分の財産は、最後まで面倒を看てくれた相続人に多くあげたい。認知症になった後では、遺言が書けないと聞きました。自分が認知症になった後、世話をしてくれた子供に少しでも多く財産をあげる方法は無いでしょうか?

遺言で相続分の指定を第三者に委託する事が出来ます。
信頼できる人(任意後見人など)がいればその人に相続財産をどのように分けるかをお願いする事が出来ます。
ただし、委託を受けた人が相続分の指定を拒否する事が出来ます。
その場合は、遺言の効力は無効となります。